コラム

大手個別指導塾の経済構造

定義

ここでは、「大手個別指導塾」という語を、個別指導塾のうち、次の2つが別個の人であるものとして扱います。

  • 塾講師
  • 運営者

大手個別指導塾のビジネスモデル

次の表は、個別指導塾の収支をごく大まかに表したものです。

収入支出
授業料教師人件費
運営人件費
施設費
広告費
税金

大手個別指導塾は、塾講師から教育サービスを仕入れ、消費者に販売します。塾教師の報酬は、収益ではなく費用として捉えられます。

収益方法

大手個別指導塾は、一定期間の総授業時間を増やすことによって、収益を出します。

以下では、大手個別指導塾が収益を上げるために一定期間の総授業時間を増やす理由を説明します。

授業料の算定方法

個別指導塾では、基本的には、授業1時間を単位に授業料を算定します。したがって、収入を増やすためには、総授業時間を増やすことが重要です。

施設費

塾の施設は、通常、固定されています。塾が日によって転々とすることは、通常、ありません。そのため、塾が負担する施設費は、固定されることになります。

施設費は、一定期間の総授業時間が増えれば、より広く分散することができます。つまり、単位時間1人当たりの支出を抑えることができます。

教師人件費

教師人件費も、一定期間の総授業時間と関係があります。

大手個別指導塾は、一定期間の総授業時間を増やすと、集客力の乏しい教師に対して次のようにすることができます。

  • 日給を上げる。
  • 時給を下げる。

集客力の乏しい教師は、自分では生徒数を増やすことができないため、時給を上げても1日当たりの収入を上げることができません。

他方で、一定期間の総授業時間が大きい個別指導塾は、教師に対し、より長い授業を紹介することができます。しかも、個別指導塾の教師は、家庭教師と異なり、移動時間を割く必要がありません。

したがって、集客力が乏しい教師は、個別指導塾から授業を紹介してもらった方が、自分で集客するよりも多くの日給を得ることができます。

そのため、個別指導塾は、教師時給を引き下げるために、一定期間の総授業時間を増やそうとします。

総授業時間を増やす方法

一定期間の総授業時間を増やすためには、次の2つが必要です。

  • 生徒数の増加
  • 生徒1人当たりの総授業時間の増加

生徒数の増加が必要である理由は、次の2つです。

  1. 生徒1人が同時に受けられる授業が1つであるから。大手個別指導塾は、複数の生徒に同時並行で授業をすることで、総授業時間を増やします。
  2. 家庭1つが購入することができる授業時間には、上限があるから。大手個別指導塾は、多数の生徒の授業を行うことで、総授業時間を増やします。

授業料を上げることについて

大手個別指導塾は、原則として、授業料を上げようとはしません。

授業料を上げることは、2つの問題を引き起こします。

  • 生徒1人1時間当たりの収益
  • 一定期間の総授業時間
授業1時間当たりの収益

授業料を上げるためには、授業の質を高めることが必要です。授業の質を高めるためには、教師の人件費を引き上げることが必要になります。

大手個別指導塾では、教師人件費が費用として捉えられます。したがって、授業1回の収益は、授業料を上げても、必ずしも増えません。

一定期間の総授業時間

一定期間の総授業時間の増加は、大手個別指導塾の収益を増やすために重要なのでした。しかし、一定期間の総授業時間は、授業料を上げると、減る可能性があります。

大手個別指導塾の差別化

個別指導塾が他塾と同じような教育を提供するだけでは、次のことが起こります。

  • 価格競争
  • 生徒の取り合い

これは、次のことを引き起こします。

  • 授業料の減少
  • 総授業時間の減少

結局、個別指導塾の営業状態は、悪化します。

そのため、個別指導塾は、競争がある場合、差別化を進めます。その方法の候補には、次のものがあります。

  • 授業の質を高めること
  • 広域に展開すること
  • 授業外の質問

授業の質を高めること

個別指導塾は、授業の質を他の個別指導塾よりも高くすれば、差別化することができます。

大手個別指導塾の主力教師は、基本的には、大学生講師です。大学生の学力は、大学ごとに均質化されています。同じ地域の他塾も、同じ大学の学生を採用しています。そのため、質の点で差別化することは、困難です。

広く展開すること

大手個別指導塾は、次の2つによって、他の塾と差別化することができます。

  • 生徒数
  • 教室数

生徒数や教室数が多い塾は、それだけ多くの人が選んでいることになります。そのことは、塾の社会的評価が高いことを間接的に表します。すると、その塾は、社会的評価が他塾よりも高いことを暗に主張することができます。

したがって、大手個別指導塾の中には、積極的な広告によって、生徒を集めるものが出てきます。広告力は、基本的に、資本力によって決定します。例えば、保護者向けのテレビ広告などは、多大な費用を要します。この場合、塾の社会的評価は、授業の質よりも、資金力によって決定することになります。

授業外の質問

これは、自習スペースがあることを前提とします。

個別指導塾は、少数の教師に人件費を割くことによって、自習中いつでも質問できるようにすることができます。

しかし、これは、正規の授業時間を減少させかねません。個別指導塾のメリットには、授業中にいつでも質問できることが挙げられます。授業外で質問できることは、正規の授業の必要性を弱めることになります。

個別指導塾の中には、その方向に進んで、正規の授業を無くしたものもあります。

差別化による付随的利益

立地条件の改善

個別指導塾は、塾という場所に生徒が訪れることになります。そのため、個別指導塾は、できるだけ多くの生徒が通学できる地域に設置されます。

これには、他塾との競争が激しくなるというデメリットがあります。なぜなら、通学可能な生徒が多い地域では、他社の塾も設置されることになるからです。

しかし、大手個別指導塾は、その塾と差別化がなされていれば、価格競争を抑えることができます。

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