コラム

学校の勉強をすべき理由

質問

保護者や教師に対する子どもの質問の中では、次のものが広く知られています。

  • 学校の勉強は、何のためにやるのか。

大人の答えは、大体、次のようなものです。

  • 高い収入を得るため。
  • 知識を得ることが楽しいから。

これらの答えは、特定の価値観にもとづいたものに過ぎません。確かに、答えている人は、それが正しいと本気で思っているのでしょう。しかし、同じ価値観を持たない他人には、何の説明にもなっていません。

また、学校で習う知識を身に付けても、必ずしも、収入を高くするようには思われません。例えば、微分が分からなくても、必ずしも、収入が低いことにはなりません。

答え

質問に対する答えは、次の2つです。

  1. 学校の勉強をすべき理由は、無い。
  2. 学校の勉強をすべきだと思っている人が多い方が、全体として生きやすい。

群れ

群れの必要性

人は、群れで生きる生き物です。

1人だけでは、食料を安定的に得ることすらできません。また、他の動物に対抗することもできません。結局、次のいずれかが原因で死ぬでしょう。

  • 食べ物が無くなる。
  • 食べ物になる。

また、1人の人は、純粋に力だけで10人と殺し合いをした場合、ほぼ確実に死ぬことになります。

したがって、人が生き延びるためには、何らかの群れに所属することが必要です。つまり、生き延びている人間は、何らかの群れに所属していることになります。

そして、群れのメンバーは、群れが繁栄はんえいするように行動しなければなりません。群れが衰退すれば、死ぬ危険性が高まるからです。

群れと教育

様々な状況に対応して群れを維持するためには、知識・技術が大切です。例えば、次の事柄に関する知識・技術です。

  • 食料の生産
  • 病気の治療
  • 家屋の建築

また、群れの内部では、殺し合いなどの紛争につながる問題を防がなければなりません。そのためには、次の事柄について知識・技術が必要です。

  • 合意の形成
  • 生産物の分配
  • 犯罪の処罰

さらには、他の群れとも必要に応じて共存しなければなりません。戦争をした場合、相手が大人しく死んでくれるわけではありません。相手を皆殺しにできたとしても、自分たちにも大きな被害が出ます。したがって、次のような知識・技術が必要になります。

  • 経済的な取引
  • 平和的な紛争解決

以上の知識・技術は、群れの中で蓄積していきます。先人が生み出した知識・技術は、後の世代の人も取捨選択しながら利用した方が良いでしょう。したがって、知識・技術の継承のために、教育が行われることになります。

この場合の教育は、必ずしも、本人の希望に基づくものではありません。群れを維持するために行われるものだからです。

身分制

仮に、次のようなルールがあったとしましょう。

  • 薬屋の親のもとに生まれた子は、将来、薬屋になる。
  • 政治家の親のもとに生まれた子は、将来、政治家になる。

この時、薬屋の子どもは、基本的に次のようなことについて勉強すれば十分です。

  • 薬の効能
  • 薬の生産
  • 薬の販売

政治は、政治家の子どもが学ぶものであって、薬屋の子どもが学ぶものではありません。したがって、次のようなことについて学ぶ必要もありません。

  • 群れ全体での合意形成
  • 他の群れとの平和的な紛争解決

多数派の力

現代の日本では、多くの人々が身に付けなければならない知識・技術があります。

適切な知識や技術がない人が多いと、例えば、次のようなことが起こります。

  • 犯罪の容疑者を池に沈め、浮いてきたら有罪とする。

現代人は、どのような仕事に就くのか生まれた時点で推測することができません。そして、全員が政治に参加することができます。したがって、多数派の人々がどう行動するかは、群れの運営に強い影響力を持つようになっています。

群れを適切に運営するためには、容疑者を池に沈めるべきだという意見を無視することが必要です。つまり、一部の人々がそう主張した際、そのような意見を群れとして否定しなければなりません。そのためには、池に沈めても有罪か無罪か分からないという考えを群れ全体に広めることが必要になります。

学校の勉強の必要性

群れ全体に広めるべき考えには、次のものがあるでしょう。

  • 共通語
  • 科学
  • 歴史
  • 地理
  • 政治制度
  • 経済制度

問題は、具体的に何を扱うべきかが必然的には決まらないということです。例えば、科学についてどこまで深く扱うかは、必然的には決まりません。

他方で、決めなければ、広めることもできません。したがって、教育の内容は、政治によって決まります。日本では、国(文部科学省)が作る学習指導要領などの基準よって決まります。

そして、学校は、国が作った基準に基づいて、教育を行うことになります。

結局、学校で教わる知識・技術を多くの人が身に付けると、その分だけ群れが生きやすい所となると考えられます。

人格

1人1人が勉強をしないのは、自由です。ただし、勉強しなくても良いと思うのは、次のような制度が自分を守ってくれるからでしょう。

  • 生活保護
  • 医療保険
  • 年金
  • 平和主義
  • 合理的な法制度

しかし、これらは、群れが上手く運営されていることを前提にしています。勉強しない人が増えすぎた場合、自分もひどい目にうかもしれません。

なお、学校の勉強をすべき理由として、次のものを挙げる人がいます。

  • 人格が磨かれる。

自らの幸福と群れの繁栄との両方を追求するという意味では、学校の勉強をすると、人格が磨かれることにはなるでしょう。

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