はじめに
家庭教師派遣業者を利用するかどうか決める際には、次の3つを考慮することが重要です。
- 家庭教師の質
- 授業料
- 授業の頻度
家庭教師派遣業者を利用すると、自分で家庭教師を探した場合に比べて、次のようになる可能性があります。
- 家庭教師の質が上がる。
- 授業の頻度が減る。
家庭教師派遣業者
家庭教師派遣業者とは
「家庭教師派遣業者」とは、このページでは、次のような業者を意味します。
- 消費者に対し家庭教師を派遣する。
- 個々の家庭教師を登録し、情報を蓄積する。
家庭教師派遣業者の企業名には、次のものがあります。
- 家庭教師センター
- 家庭教師協会
「仲介業者」という呼び方は誤り。
家庭教師派遣業者は、「仲介業者」と呼ばれることもあります。しかし、この呼び方は適切ではありません。
「仲介」とは、仲介者が売り手と買い手との間で、契約が成立するように調整することを意味します。
家庭教師派遣業者が機能する場面では、消費者と家庭教師の間では契約が締結されません。むしろ、消費者と家庭教師は、それぞれ別個に、業者と契約を結ぶことになります。
したがって、家庭教師派遣業者の機能は、「仲介」には該当しません。
家庭教師派遣業者のメリット
家庭教師派遣業者は、何のために存在するのでしょうか。これについて検討するためには、次の2つの視点が大切です。
- 消費者
- 家庭教師
家庭教師派遣業者が存在するためには、当然、消費者の支持が必要です。他方、家庭教師にも支持されなければ、家庭教師派遣業者は、家庭教師を確保することができません。
この2つの視点から、家庭教師派遣業者のメリットについて検討します。
消費者にとってのメリット
家庭教師から授業を受けようとする消費者は、家庭教師を探して選ぶことが必要となります。しかし、消費者が自ら家庭教師を選ぶことは、簡単ではありません。
家庭教師に依頼する際には、消費者にとって、一定のリスクが発生します。そのリスクの例は、次のものです。
- 家庭教師が指導経験を捏造した。
- 指導力が事前には明らかでない。
- 料金が適正であるのか分からない。
このリスクの発生原因は、次の3つです。
- 家庭教師は、参入障壁が低い業種です。先行投資・許認可・資格取得を必要としません。したがって、候補の中に質の低い家庭教師が混在する確率が比較的高いことになります。
- 消費者は、必ずしも、学習すべき内容について詳しいわけではありません。したがって、どのような家庭教師に任せればよいのか、自ら判断することが困難です。
- 個々の家庭教師についてクチコミを集めることは、通常、簡単ではありません。
そのため、一部の消費者は、次のような業者を求めることがあります。
- 個々の家庭教師について情報を持っている。
- 家庭教師を選んでくれる。
- 料金の設定をしてくれる。
家庭教師にとってのメリット
家庭教師が家庭教師派遣業者を利用する理由は、家庭教師が常に集客の問題を抱えているからです。ここでは、以下の3つについて、検討します。
- 広告の費用対効果
- 「合格実績」の出しにくさ
- 生徒の卒業
広告の費用対効果
家庭教師自身は、通常、自ら広告を行いません。1人の家庭教師が担当できる生徒数は、多くとも15人程度です。しかし、その15人は、地域のどこに住んでいるのか分かりません。したがって、その15人を見つけるために地域全体に広告を行うことは、効率が良いとは言えません。
他方、家庭教師派遣業者は、積極的な広告活動を通じて、集客を行います。大手業者は、テレビ広告を出すこともあります。業界最大手は、有名なアニメキャラクターを使って、テレビ広告を行います。
また、それ程の規模でない業者も、チラシや冊子などを各地に配布しています。実際、コンビニやスーパーなどに家庭教師派遣業者の冊子が置いてあるのをご覧になったことがあるかもしれません。
家庭教師派遣業者が積極的に広告活動を行う理由は、次の2つです。
- 処理能力の面では、家庭教師派遣業者は、多数の家庭教師に業務委託することを通じて、多数の生徒に対応することができます。
- 収益面では、生徒数を増やすと、授業時間の合計が増え、収益を増やすことができます。
- ここで言う「収益」とは、消費者が払う授業料と家庭教師が貰う報酬の差額の合計です。
結局のところ、家庭教師は、広告について家庭教師派遣業者に依存するようになります。
「合格実績」の出しにくさ
家庭教師は、いわゆる「合格実績」を出し続けることが簡単ではありません。
塾は、各年度の大学入試や高校入試について、いわゆる「合格実績」を発表しています。大手塾では、毎年、数十人の生徒が入試を受けるのですから、毎年の合格者数も相当なものになります。また、塾の集客力や奨学金などによって初めから勉強ができる層を取り込むことができれば、「合格実績」も派手になります。
なお、ここでカギカッコを付ける理由は、「合格実績」の内容が、「〇〇大学に合格した」「〇〇高校に合格した」という生徒の実績であって、塾の実績ではないことが多いからです。
他方、個々の家庭教師は、受験生に特化していない場合、毎年担当する受験生の人数がそれ程多くはなりません。また、勉強が苦手な生徒に対応することも多くあります。したがって、いわゆる「合格実績」を出し続けることが簡単ではありません。
家庭教師が集客するためには、生徒ごとの個別事情に基づいて指導を評価し、集客に協力する人の存在が重要です。
生徒の卒業
中学生や高校生を対象とする教育では、生徒が卒業します。仮に、顧客満足度が極めて高い状態であったとしても、指導契約は、卒業と共に終了します。
したがって、中学生や高校生を対象とする教育事業者は、毎年、集客を続けなければなりません。家庭教師は、大体の場合、集客力に問題を抱えている以上、自分では生徒数を確保することができません。
家庭教師派遣業者の収支
次の表は、家庭教師派遣業者の収支をごく大まかに表したものです。
収入 | 支出 |
---|---|
授業料 | 家庭教師の報酬 |
企業内従業員の人件費 | |
広告費 | |
事務所賃料 |
先程、家庭教師派遣業者の収益は、消費者が払う授業料と家庭教師が貰う報酬の差額の合計であることに触れました。したがって、家庭教師派遣業者は、次のことによって収益を増やします。
- 生徒数の増加
- 授業時間の増加
- 家庭教師の1コマ当たりの報酬の抑制
- 直接契約の禁止
生徒数や授業時間の増加が「収益」につながることは、明白であると思います。以下では、「家庭教師の1コマ当たりの報酬の抑制」と「直接契約の禁止」について、ご説明します。
家庭教師の1コマ当たりの報酬の抑制
家庭教師の1回の報酬は、次のように抑制します。
集客力の乏しい家庭教師は、1日当たりの収入を上げることが難しい状態にあります。生徒が集まらないからです。そのため、結局、日給を上げることができません。
したがって、家庭教師派遣業者は、個々の家庭教師の生徒数を増やすと、集客力の乏しい家庭教師に対して次のようにすることができます。
- 日給を上げる。
- 時給を下げる。
直接契約の禁止
消費者は、家庭教師派遣業者を通して、良い家庭教師を見つけたとします。この場合、消費者は、「家庭教師派遣業者は、これ以上は不要だ。」と思うかもしれません。それでも、消費者は、その家庭教師に教わる限り、家庭教師の報酬に加えて、派遣業者の取り分を払い続けなければなりません。
家庭教師は、家庭教師派遣業者に集客してもらう代わりに、授業料を分け合うことを家庭教師派遣業者と契約しているからです。
家庭教師派遣業者のデメリット
家庭教師派遣業者のデメリットは、授業の頻度を増やしにくいということです。
仮に、家庭教師派遣業者を利用した場合と利用しない場合とで、授業料が次のようになったとします。
家庭教師派遣業者 | 1回の授業料 |
---|---|
あり | 6,000円 |
なし | 4,000円 |
4回の授業料は、家庭教師派遣業者を通すと24,000円となります。直接契約では、24,000円あれば、授業を6回行うことができます。
一般論として、各家庭が支払う授業料の予算には、上限があります。したがって、予算と授業単価によって、授業の頻度が決まります。したがって、家庭教師派遣業者を利用した場合、直接契約よりも授業単価が上がるため、授業の頻度が減ります。
家庭教師派遣業者に依頼する際は、授業単価が上がることだけでなく、授業の頻度を減らすだけの価値があるか検討することが必要です。
なお、私の指導経験に基づくと、基本的に、週1回の授業では、大して成績が上がりません。授業頻度は、週3回程度が必要です。
(もちろん、私の指導力が不足している可能性もあります。また、派遣業者の優秀な家庭教師は、週1回でも、有効なのかもしれません。)
まとめ
家庭教師派遣業者を利用するかどうか決める際には、次の3つを考慮することが重要です。
- 家庭教師の質
- 授業料
- 授業の頻度